蓬(よもぎ)とは?
身近な植物のよもぎですが、よもぎはキク科に分類され、
キク科は最も進化した植物と言われています。
世界ではおよそ950属2万種、日本では約70属360種の
キク科植物が知られており、地球上のほとんどの地域で
生育可能です。
代表的なキク科に、ヒマワリやコスモス、タンポポなどが
あり、レタス、ゴボウなどもキク科に入ります。
よもぎはお灸のもぐさとして有名ですが、近年は韓流
ブームもあり、韓国式よもぎ蒸しが広く知られるように
なっています。
また、よもぎの香りに精神を癒すアロマ効果があり、
よもぎ枕などの商品も販売されています。
他にも、よもぎ餅やよもぎ茶、よもぎ湯や傷の治療など
様々な場面で活用出来るよもぎは
『ハーブの女王』と呼ばれるほどの素晴らしい薬草です。
よもぎの由来
日本のよもぎの由来については諸説ありますが、四方によく繁殖するので「四方草」や、良く萌え出る草という意味から「善萌草」、よく燃えるので「善燃草」などと言われています。
また、よもぎは学名をアルテミシア属(Artemisia)と言い、ギリシャ神話で女性とその健康の守護神と謳われた女神アルテミスの名から取ったものです。
よもぎの歴史
よもぎの生命力は素晴らしく、踏みつぶされたりちぎられたとしても、日当たりさえ良ければどんな荒地でも繁殖することが出来ます。その生命力にあやかる昔の人々は、まず、よもぎの優れた生命力に注目し、食べ始めたと思われます。そして、食べたり煎じて飲むことにより色々な効能が確かめられ伝えられてきたのです。
さらにこの不思議な力は魔除けとして馴染みが深くなります。
日本の風習でめでたいときは紅白で飾ります。その中に紅白の餅がありますが、昔は白と緑の餅が飾られていました。緑の餅は、中国から伝わったと言われています。中国ではハハコグサ(母子草)を使って作りますが、日本に伝わった際に厄を払う、という意味を込められよもぎが使われるようになりました。また、よもぎの葉を軒先に飾るのは魔除けとしての意味が込められています。
このように、よもぎは食するだけではなく様々な想いが込められた植物なのです。
よもぎは腰痛や神経痛などの治療で用いられる『お灸』で使用するもぐさの原料としても有名です。約二千年前の古代中国の北方地方においてお灸が始まり、日本へ伝わってきたのは西暦六百年ほど前になります。
よもぎの逸話
戦争中によもぎで一命をとりとめた経験をした
人の話があります。
太平洋戦争中、南方戦線に従軍した兵士の多くが
マラリアに感染しました。
マラリアは、エイズ、結核と並ぶ世界三大感染症の
1つであり、マラリア原虫を持つ
ハマダラカという
蚊に刺されることで感染します。
世界中の熱帯・亜熱帯地域で流行する感染症で、
主に高熱に伴う悪寒や頭痛、嘔吐、関節症や
筋肉痛などのほかに脳症などの重篤な合併症を
併発する恐れがあり、
発症から24時間以内に
適切な治療を行わないと重症化し、
死に至ることがあります。
当時、抗マラリア薬として「キニーネ」という薬が
ありましたが、全ての感染者を
賄えるほどの数は無く、
マラリアによって多数の命が失われました。
その方の周りにも例に漏れず、マラリアの罹患者が
居ましたが、彼の所属していた部隊には
発熱などによもぎの搾り汁が効くことを
覚えていた隊員が居ました。
その隊員のすすめで、キニーネの代わりとして
よもぎの搾り汁を飲ませたところ
何人かがマラリアに打ち克つことが出来たそうです。
残念ながら、慣れない異国の地でよもぎを集めるのも
容易ではなかったため、十分な搾り汁を
得るためのよもぎを確保できず、食糧事情が
悪かったのも相まって全員を救うことが
出来ませんでしたが、その方は幸運にも助かり、
戦後も食糧難や混乱期にも欠かさず
よもぎの搾り汁を飲んで乗り切ったそうです。
それから数十年後、よもぎの一種であるオウカコウから
マラリアに効果のある
アルテミシニンという
成分が発見され、よもぎのマラリアに対する効果が
科学的にも解明されました。このアルテミシニンは
現在のマラリアの治療に広く活用されています。